離婚とお金の問題
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離婚に際してはお金の問題が大きくクローズアップされることになります。
ここでもまずは、通常の日本の離婚の場合の慰謝料、財産分与、養育費、婚姻費用の4つについて解説します。 |
慰謝料
慰謝料とは、離婚の相手方の不法行為により受けた損害(精神的苦痛や虐待による肉体的苦痛などの損害)を、回復するために支払われる金銭をいいます。
離婚に伴う慰謝料の準拠法は、離婚で適用された法と同一です。
離婚慰謝料には、
①離婚せざるを得ないことによりこうむった精神的苦痛についての慰謝料
②暴力、不倫等離婚原因である相手方の有責行為により被った精神的苦痛についての慰謝料
の2種類があります。
離婚の相手方だけではなく、その不倫相手が結婚していることを知っていながら不倫をしていたような場合には、その不倫相手にも慰謝料請求をすることができます。
ただ、離婚慰謝料は請求すれば、必ず認められるわけではありません。
離婚の原因が、相手方の暴力や不倫であり、それを相手方が認めている場合や、証拠(診断書や不倫の現場を撮影した写真など)が存在する場合は別ですが、そうでない場合(性格の不一致や家庭内の不和、証拠がないなど)には、慰謝料が認められないこともあります。
財産分与
財産分与とは、夫婦の協力で、それまでの結婚生活において形成した財産を、離婚時に清算、分配する制度です(通常は1/2の割合で分配することになります)。
財産分与の準拠法は、離婚で適用された法と同一です(法の適用に関する通則法27条)。
日本法が適用される場合、「夫婦の協力で、それまでの結婚生活において形成」された財産が分与の対象になる点に注意が必要です。したがって、結婚前から既に所有していた財産(結婚指輪や一人で貯めていた預貯金など)は財産分与の対象には含まれませんし、結婚後においても、相続により一方が取得した不動産などは、財産分与の対象にはなりません。
逆に、「夫婦の協力で、それまでの結婚生活において形成した」と評価できるのであれば、財産の名義は関係ありません。夫婦で貯蓄していたお金の預金口座が妻名義である場合や、結婚後に購入した不動産の名義が夫名義であっても、それが夫婦の協力で形成された財産と評価できれば、当然財産分与の対象となります。
また、財産分与の対象となるのは、プラスの財産ばかりではありません。夫婦の共同生活の中で生じた借金などの債務も財産分与の対象となります。典型的な場合としては、家族の共同生活のために購入した家の住宅ローンの場合があります。
2007年年4月1日以降は、新たに年金分割という制度が創設されたので、これにより、将来発生する年金の分割も、一定の場合可能になりました。
養育費
養育費とは、子供を育てるのに必要な費用のことです。
国際離婚については、一般的に法の適用に関する通則法が適用されますが、養育費については、扶養義務の準拠法に関する法律が適用され、扶養権利者の常居所地法、それにより扶養が受けられないときは、扶養権利者及び扶養義務者の共通本国法、それらのいずれによっても扶養を受けられないときは日本法が適用されます(扶養義務の準拠法に関する法律第2条)。以下では、日本法が適用されることを前提とします。
養育費には、子供にかかる衣食住費、教育費、医療費、最低限の娯楽費などが含まれます。
養育費は、離婚前は婚姻費用として請求するのが一般的で、離婚後は、子を引き取る親が、相手方に対して監護費用として費用の請求をするものです。
算定表について
2003年春、東京都大阪の裁判官らによる研究の結果、養育費、婚姻費用の算定基準がまとめられました。
この算定表は、現在、東京・大阪の家庭裁判所で参考資料として活用されており、他の家庭裁判所でも徐々に参考にされつつあります。
また、家庭裁判所の調停においても、調停委員の多くは、この算定基準を参考にしています。
したがって、養育費、婚姻費用の請求額を考える場合には、この算定表を基本にして考えることになります。
算定表は、子が支払義務者と同居したと仮定した場合の子の生活費を、権利者及び義務者の基礎収入に応じて按分して計算されます。
婚姻費用
婚姻費用とは、夫婦が結婚生活を送るために必要な費用のことをいいます。
婚姻費用が実際問題となるのは、別居中の夫婦や、同居していても夫婦関係が破綻しており、生活費が支払われない場合などです。
国際離婚に関する婚姻費用については、離婚について適用された準拠法によります(扶養義務の準拠法に関する法律4条)。
したがって、離婚が日本法に基づいて成立した場合は、婚姻費用の問題も日本法によることになります。
日本の民法上、夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担することとされています。
婚姻費用は、当事者の話し合いによって決められますが、協議が整わないときには、家庭裁判所が資産、収入等一切の事情を考慮して審判により決定されます。婚姻費用も、養育費と同様の算定表により計算されます。
以上のような離婚にまつわるお金の話は、手続的な問題や、そもそも請求できるのかという点も含めて一般的な日本での離婚のケースでも判断が難しいものですが、国際離婚となると国際裁判管轄や準拠法の問題もあるため、国際離婚に詳しい弁護士にご相談されることをお勧め致します。
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