国際離婚ケーススタディ5 在日韓国人の離婚のケース
|
|
質問
私は在日韓国人同士で結婚しましたが、離婚をしたいと考えています。
私たちは、離婚手続を日本でとることはできるのでしょうか。妻が離婚に同意しない場合はどうすればよいのでしょうか。
|
回答
在日韓国人の方でも、日本で協議離婚をすることができますが、夫婦が在日韓国総領事館に出頭して、離婚教育を受け、未成年の子がいる場合には、養育看護の方法、養育費の支払について決める必要があります。また、1ヶ月から3ヶ月の熟慮期間を経た後に初めて離婚が認められます。夫婦の一方が離婚に同意しない場合は、家庭裁判所に離婚調停や裁判をする必要があります。
解説
1.協議離婚の場合
(1) 韓国家庭法院の確認
従前は、日本民法に基づく協議離婚の届出を日本の役場に提出すれば日本側からみても韓国側からみても離婚は法律上有効に成立しました。しかし、2004年9月20日以降は、こうした取扱がなくなり、在日韓国人の夫婦であっても協議離婚をする場合には、韓国家庭法院の確認が必要となり、韓国の役場に離婚の申告をする場合には、家庭法院の確認書謄本を添付しなければならなくなりました。よって、日本の役場に協議離婚届を提出して日本法上離婚が成立しても、韓国で離婚は成立しないことになります。
こうした取扱は、離婚について何処の国の法律が適用されるのかという準拠法の問題とリンクしています。すなわち、日本の法の適用に関する通則法(以下「通則法」といいます。)第27条が準用する通則法第25条では、夫婦の本国法が同一の時は、その本国法が準拠法となります。従って、通則法第25条によると、本ケースでは夫婦の共通本国法である韓国法が準拠法となりますが、韓国民法において「協議上の離婚は家庭法院の確認を受けて戸籍法の定めるところにより届出をすることによって、その効力を生ずる。」(韓国民法第836条第1項)と定められており、韓国では、日本と同じく協議離婚が認められているのですが、それには家庭法院の確認が必要なのです。
従って、韓国民法に基づけば、むしろ、2004年9月20日までの取扱の方がイレギュラーということになります。こうしたイレギュラーな取扱がされていたのは、韓国の大法院戸籍例規において、協議離婚制度のある日本において、離婚挙行地である日本の方式による離婚申告を済ませ離婚証書の謄本を提出したときには、これを受け付けなければならないとされていたからです。しかし、2004年3月17日に大法院戸籍例規の変更により、「日本の方式により在日韓国人同士の夫婦が協議離婚した場合に、従来その離婚届受理証明書による離婚の報告的申告を認めていたが、2004年9月20日以降はその取扱いを廃止する。」とされたのです。
この結果、韓国民法に基づく原則的な取扱をすることになり、在日韓国人夫婦が協議離婚する場合、離婚を申請するときと、その後、一定期間を経て(この間に、韓国の家庭法院の許可をえることになります。)、離婚届を提出する際の最低2回は出頭しなければならなくなりました(ただし、2回目はいずれか一方の方が出頭すればよいようです。)。
(2) 手続
韓国の協議離婚制度では、離婚申請の際、離婚教育を受け、その後一定の離婚熟慮期間経過後にも離婚意思があることが確認されて、初めて離婚が認められます。
離婚熟慮期間は次のとおりです(ただし、一定の短縮免除事由があります。)。
①子がいない場合又は子がすべて成年に達している場合、案内・面接日から1ヶ月
②未成年の子(妊娠中の子を含むます)がいる場合、案内・面接日から3ヶ月
③案内・面接日から1ヶ月後3ヶ月以内に成年に達する未成年の子がいる場合、子が成年に到達する日
④案内・面接日から1ヶ月以内に成年に達する未成年の子がいる場合、面接日から1ヶ月。
また、未成年の子がある場合には、その養育看護の方法、養育費の支払についての合意が成立しないと離婚が成立しません。
なお、上記(1)(2)の手続は、韓国法上の協議離婚が成立するために必要とされるのであり、日本の戸籍実務では、上記手続がなくても離婚届書の提出があれば受理されています。しかし、このように、上記手続を経ずに日本法上離婚が成立しても、韓国法上の離婚は成立していないことになるので注意が必要です。
2. 調停離婚・裁判離婚の場合
夫婦ともに日本に居住しているので、国際裁判管轄は日本ということになります。そして、前述のように準拠法は韓国民法となります。
従って、日本の家庭裁判所において、韓国民法上の離婚原因の有無が判断されることになります。離婚が成立すれば、調停調書や判決正本を韓国総領事館に提出することにより、韓国戸籍上、離婚が反映されることになります。この場合、離婚の成立時期は、日本の裁判所での調停成立時や判決が確定した時であり、韓国総領事館への届出は、韓国戸籍に離婚を反映させるための報告的届出ということになります。
キャストグローバルにご相談いただく方へ
国際離婚・国際相続についてお悩みの方は弁護士法人キャストグローバルへ