国内離婚ケース1 相手方に対する愛情が冷めてしまったケース
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質問
私(日本人男性)は、妻(日本人)と結婚して、東京に住んでおります。既に結婚して10年になりますが、最近妻に対する愛情がすっかりなくなってしまいました。勝手な話なのですが、妻と離婚したいのです。このような場合に離婚できるのでしょうか。
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回答
結婚するときは、共に白髪までと思っていても、年月が経てば、愛情も薄れるというのはよくあることです。しかも結婚生活というのは日々の生活ですから、一旦愛情が喪失するといままで気にならなかった相手の「箸の上げ下げ」から「ご飯の食べ方」まで嫌になってしまうということもよく聞きます。そうなると結婚生活は苦痛でしかなくなり、「離婚」という言葉が頭に浮かぶようになりますが、嫌いになったからといって直ちに離婚できるものではありません。結婚も一種の契約ですから一方的に破棄できません。
もっとも、離婚したいとの申し入れに対し、相手が同意すれば、協議離婚ということで離婚は成立します。しかし、相手が同意しなければ、法的な手続をとらなければ離婚はできません。
離婚の法的手続としては、調停と訴訟がありますが、日本では調停前置主義がとられているので、いきなり、離婚訴訟を提起することはできません。そこで、まず、調停申立をすることになります。
調停手続では、2名の調停委員が離婚したい側の言い分と離婚を拒絶する側の言い分とを個別に聞いて、離婚は勿論、その他の条件(財産分与や子供がいれば親権の帰属等)の調整をして調停離婚の可能性を探ることになります。申立人と相手方との話し合いがつかなければ、不調ということになり、調停手続は終了します(調停では、成立見込みをだいたい、3回~4回で判断するので、成立見込みがないのにだらだら調停が続くことはありませn。)。
ところで、民法第770条には、裁判上の離婚原因として以下の5つが列挙されています。
①配偶者に不貞な行為があったとき
②配偶者から悪意で遺棄されたとき
③配偶者の生死が3年以上あきらかでないとき
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事情があるとき
調停の場合には、上記離婚原因がない場合でも、話し合いにより、当事者間で離婚の合意ができれば、調停離婚ができます。他方、離婚訴訟の場合には、上記の離婚原因の有無を裁判所が認定して判決をすることになり、離婚原因が認定されなければ離婚請求は棄却されます。
では、今回問題となっている「愛情の喪失」はどうでしょうか。
「愛情の喪失」というのは非常に抽象的・表面的な言葉で、愛情喪失に至る原因が上記①から④のいずれかに該当するのであれば、離婚原因があることになりますが、①~④のいずれにも該当せず、とにかく一緒にいるのが嫌になったというような場合、それだけでは⑤に該当するともいえません。それゆえ、調停が不調になって、離婚訴訟を提起してもまず、離婚認容判決は望めません。
このような場合、まず、別居という既成事実をつくることから始めます。しかし、ここで注意しなければならないのは、妻が専業主婦などの場合、夫側が一方的に家を出て行って、生活費等を負担しないと、見方によっては、悪意の遺棄ととられかねないということです。そうなると有責配偶者からの離婚請求ということで、更に離婚のハードルは高くなります。それゆえ、別居するにしても生活費(婚姻費用といいます)をきちんと負担することが必要です。
現在、裁判所は離婚については、破綻主義を採用しており、別居期間5年が破綻の認定の目安となっているといわれています。しかし、これも一応の目安にすぎず、絶対的ではありません。婚姻期間との対比、未成熟子の存在などが不確定要素として存在するからです。
決定的な離婚原因が存在せず、単に妻に対する愛情喪失という理由で離婚を求め、妻が断固として離婚を拒否した実際の事件では、以下のとおり離婚成立までに相当な時間がかかったものがありました。
①別居後2年で離婚調停申立→不調→離婚訴訟→離婚請求棄却→控訴審→控訴棄却で確定。
②その3年後に再度、離婚調停申立→不調→離婚訴訟→離婚請求棄却→控訴審→控訴棄却で確定。
③さらに3年後に離婚調停申立→調停離婚成立
妻の体調不良や、未成熟子の存在など様々な離婚の障碍となる事情がありましたが、時間の経過とともに別居期間の長期化、未成熟子問題の解消、財産的な手当の充実という離婚を認めやすい事情が増えたことが調停離婚成立の大きな要因です。
ここまで時間がかかる事件は少ないのですが、離婚事件に限らず、全ての事件にいえることですが、法律が要求する条件が全てそろっている事例などほとんどありません。条件が欠けている部分を、いかなる方法で補い、着地点を見つけるのかが重要であり、離婚事件においては、弁護士はもとより、当事者も根気・忍耐力が必要となります。
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