ケーススタディ 離婚と在留資格
|
|
【質問】
私は、アメリカの大学を卒業したアメリカ人で、6年前に来日しました。
日本人の女性と2年前に結婚し、1歳の子供が一人います。
私が、他の女性と不貞をしたことが発覚し、妻と離婚することになりました。私は、来日当初から語学学校の教師をしており、月収は月額35万円ぐらいです。子
|
供にも会いたいので、これからも日本で生活したいのですが、可能でしょうか。
【回答】
日本人と婚姻したことにより、現在のあなたの在留資格は「日本人の配偶者等」ということになります。しかし、日本人である奥さんと離婚すれば、この在留資格は認められません。もっとも、お子さんがいるので、子供を扶養する目的で「定住者」という在留資格が認められる可能性があります。
【解説】
外国人が日本に在留する場合、「出入国管理及び難民認定法」所定の在留資格が必要となります。在留資格によって、外国人は活動できる範囲に規制があります。
「日本人の配偶者等」という在留資格は、「永住者」、「永住者の配偶者等」、「定住者」と同様に基本的にあらゆる活動が認められる在留資格です。しかし、日本人配偶者と離婚した場合には、もはや「日本人の配偶者等」とはいえなくなりますから、当然、当該在留資格は認められません。そこで、在留資格の変更をすることになります。
では、この場合、いかなる在留資格が認められることになるのでしょうか。
まず、質問者のように未成年で未婚の子供がいる場合には、通達により「離婚時に日本人の実子の親権者となり、その子の日本での扶養を目的とした日本在留」であれば、在留資格を「日本人の配偶者等」から「定住者」へ在留資格変更の申請が可能となっています。
日本では、婚姻時には夫婦の共同親権ですが、離婚時に夫婦のいずれかを親権者と定める必要があり(民法890条)、離婚後は、離婚時に親権者となった者の単独親権となります。従って、質問者が離婚時に親権者となれば、上記通達により、「定住者」への在留資格変更の申請が可能となります。
しかし、離婚時に親権者を母親とした場合には、質問者は上記通達による在留資格の変更申請はできません。親権について、裁判所で争っても、日本の実務では、子供が小学生であれば、母親に親権が認められることがほとんどです。とすれば、夫婦で父親を親権者とすることの協議が出来た場合は格別、質問者が子供の親権者となる可能性は極めて低く、通達による在留資格の変更申請ができる可能性もまた低いといえます。
では、「定住者」への変更が認められなかった場合、在留資格はどうなるのでしょうか。
「語学学校の教師」という職業が、在留資格の何にあたるかを検討することになりますが、「人文知識・国際業務」に該当すると思われます。ここにいう「人文知識」は、文化系の大学(専門学校等の専門過程も含まれる)を卒業していて、または、日本の専門学校を卒業して専門士の資格を得ていて、その報酬も日本人と同等以上であること、または、10年以上の職歴があることが要求されています。「国際業務」とは、通訳や翻訳その国の特徴を生かしたデザイナーなどの限られた職種で、実務経験が3年以上あること、報酬が日本人と同等以上であることとされています。平成20年に、法務省入国管理局は、「人文知識・国際業務」に該当する典型例を発表しており、そこには「本国の大学を卒業した後、本邦の語学学校との契約に基づき月額約25万円の報酬を受けて、語学教師としての業務に従事するもの」とあります。
従って、質問者の場合にもこれに該当するので、「人文知識・国際業務」という在留資格が認められる可能性があると思われます。ただ、この在留資格は、「日本人の配偶者等」の在留資格に比べて非就労活動・就労活動に制限があるので、従前通りの活動に制限のない資格ということであれば、やはり「定住者」の在留資格に変更する必要があります。
なお、永住許可に関するガイドラインにおいて、日本人、永住者及び特別永住者の配偶者の場合、実態を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留している場合(ただし、その者が現に有する在留資格の最長の在留期間(当面は3年間)をもって在留していることが必要です。)に、「永住者」への変更が認められます(なお、「定住者」の在留資格を有している者については、定住許可後5年以上の在留を要件として「永住者」への変更が認められる可能性がありますが、質問者の在留資格は、「日本人の配偶者等」ですので、これには該当しません。)。
したがって、質問者が上記要件を満たしている場合には、「永住者」への在留資格の変更が認められる可能性があります。ただ、既に婚姻関係が実質的に破綻している場合には、その時点での、「永住者」への在留資格への変更は困難と思われます。したがって、外国人の方が、将来的にも日本にいたいのであれば、婚姻関係が安定的に継続している時点において、「永住者」の在留資格に変更しておくべきであるといえます。一旦、「永住者」の在留資格に変更しておけば、その後、離婚したとしても、それを理由として「永住者」の在留資格が取り消されることはないからです。
キャストグローバルにご相談いただく方へ
国際離婚・国際相続についてお悩みの方は弁護士法人キャストグローバルへ
国際離婚についての目次