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国際離婚ケーススタディ4 アメリカ人の妻が日本人の夫の知らない内にアメリカで離婚判決を得たケース
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質問
私は、アメリカ人の妻と結婚して10年になります。
私の実家はいわゆる旧家でいろいろ面倒なしきたりがあり、アメリカ人の妻にはそうしたしきたりは不合理この上なく理解できなかったようです。もともと国際結婚に反対していた母との折り合いも悪かったのですが、半年前に家を出てアメリカに帰ってしまいました。今日、妻からアメリカで離婚手続をとり、離婚判決を得たという
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連絡が入りました。私にとっては晴天の霹靂で、離婚訴訟のことは、全く知らされていませんでした。
この離婚判決は日本でも効力が認められるのでしょうか。
回答
裁判権及び呼出しについて問題があり、アメリカ人の妻がアメリカで得た離婚判決は日本では有効ではありません。
離婚判決や離婚無効確認訴訟を日本の裁判所に提起してアメリカでの離婚判決の無効を確認することができます。
解説
(1) 外国判決の有効性
民事訴訟法第118条は、外国裁判所の確定判決の効力に関して下記のように規定しています。
外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。
①法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
②敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
③判決の内容及び訴訟手続が日本の公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
④相互の保証があること。
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従って、アメリカの判決が日本で効力が認められるためには、本ケースでも妻がアメリカで得た離婚判決が上記の条件をすべて充足している必要があります。
①個別的検討
まず、本ケースではアメリカに裁判権があることが必要になります。裁判権とは、国際裁判管轄のことです。この国際裁判管轄とは、アメリカ法の基準で国際裁判管轄があるということではなく、日本法の基準で、アメリカが、事件について国際裁判管轄を有している必要があります(このような管轄のことを間接管轄といいます。)。この管轄の有無は、日本の裁判所が、ある事件について国際裁判管轄を有しているか否かという判断を行う場合と同じ基準により判断されるのです。
この点については、最高裁の昭和39年3月25日の判例で、原則として相手方の住所が日本国内にある場合に日本の裁判所に国際裁判管轄があることになりますが、例外として、相手方が他方の方を遺棄した場合、相手方が行方不明である場合、その他これに準じる場合には、相手方の住所地が日本国内になくても、他方の方の住所が日本国内にあれば国際裁判管轄が認められてきました。平成8年6月24日の最高裁の判例は、相手方の住所が日本国内にない場合でも、日本の裁判所に国際裁判管轄を認めています。
ここで重要なことは、日本の裁判所に国際裁判管轄が認められるか否かは、国籍は関係ないということです。したがって、外国籍同士の夫婦でも、日本に住んでいれば、日本の裁判所に国際裁判管轄が認められるのです。逆に、日本人同士の夫婦が外国に住んでいる場合に、当然に日本の裁判所に国際裁判管轄が認められるということにはならないので注意が必要です。
以上の基準を本ケースにあてはめると、裁判の被告となる夫は、日本に居住しているので、原則として、日本に国際裁判管轄があり、また、原告であるアメリカ人の妻は、勝手に帰国したに過ぎず、むしろ遺棄されたのは、夫の方であるといえ、また、夫が行方不明というような事情もありません。したがって、例外的に原告の住所地に国際裁判管轄を認める事情もないといえます。したがって、日本法の立場で考えると、本ケースのような事情の下では、原則として、アメリカには国際裁判管轄はないと思われ、この場合、法第118条第1号の要件を具備しないことになります。
また、本ケースでは、質問者は、裁判があったことを知らなかったということですから、訴訟の開始に必要な呼出を受けていない可能性があります。従って、第2号の要件も具備していないと思われます。
以上によれば、本ケースでは、アメリカの判決の効力は、日本で認められない可能性が高いと思われます。
②離婚の無効を争う方法
質問者は、日本の裁判所に、外国の離婚判決自体についての無効確認訴訟、又は、外国離婚判決に基づき既に離婚の受理がなされてしまったような場合は離婚の無効確認訴訟を提起することが考えられます。
ここでさらに問題となるのは、これらの裁判について、日本の裁判所に国際裁判管轄が認められるのかということです。
上記①で述べた基準に照らせば、夫は、妻に遺棄されたと考える余地があり、原告である夫の住所地である日本の裁判所に国際裁判管轄が認められる可能性があります。
③外国離婚判決が民事訴訟法第118条の要件を具備している場合
仮に、外国離婚判決が民事訴訟法第118条の要件を具備している場合、判決の謄本、判決確定証明書、判決謄本から日本人の被告が呼出しを受けたことや応訴したことが明らかでない場合には、日本人の被告が呼出を受け又は応訴したことを証明する書面及びそれらの訳文を添付して役所に提出することで、日本においても離婚が受理されます。
ただ、外国離婚判決が民事訴訟法第118条の要件を具備していない場合でも、添付資料の審査により当該外国離婚判決が明らかに上記要件を欠いていると認められる場合を除き、届出は受理される取扱になっています。したがって、実際は、上記要件を欠いていても離婚の受理がされてしまう可能性があります。したがって、その場合には、②で述べたように、離婚の無効確認訴訟により離婚の効力を争う必要があるのです。
なお、被告が応訴していない外国の離婚判決でも、被告である日本在住の日本配偶者自らが判決の謄本を添付して離婚の届出をした場合には受理されているようです。
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