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国内離婚ケース2 有責配偶者からの離婚請求のケース
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事案の概要
私(日本人女性)は、夫(日本人)と結婚して、東京に住んでおります。既に結婚して10年になりますが、突然、夫から、1年くらい前から好きな女性ができたので離婚したいといわれました。私には、落ち度はないと思っていますが、どうすればよいのでしょうか。
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回答
愛する夫のために一所懸命家計のやりくりをし、洗濯をし、食事を作っていたのに、夫には愛人がいて、「君とは一緒に暮らしたくない。」と言い放って家を出て行ったしまった。この時、「はい。では離婚しましょう。」と離婚に応じる女性はほとんどいないと思います。
このような場合、女性はどうすればよいのでしょう。
こういうケースでは、夫が生活費もいれてくれないということがよくあります。そこで、女性側としてまず、第一に行うべきことは、家庭裁判所に婚姻費用分担請求の調停申立です。
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して婚姻から生ずる費用を分担しなければなりません(民法760条)。これは、離婚していない以上、別居中でも同様です。この調停手続では、妻側夫側双方がそれぞれの収入を基礎付ける資料を裁判所に提出し、基本的にはそれをもとにどちらがどのくらい婚姻費用を負担するべきかが話し合われます。そして、多く負担するべき者が少なく負担すべき者に対し、一定の金員を交付することになります。
一般的には、妻より夫の収入の方が多いため、夫側から妻側に一定の金員を交付することになります。婚姻費用については、家庭裁判所が、双方の収入、子供の数別に一覧表が作成されていて(インターネット等で検索できます)、一応の目安となります。婚姻費用の調停では、婚姻費用を支払わず、いわば相手を兵糧攻めにして離婚を有利に運ぶようなことを阻止するために、調停成立前(話し合いが継続中)でも、暫定的な金額を支払うように調停委員が指導してくれることがよくあります。
婚姻費用の支払いは生活そのものにかかわってくるので、ずるずると話し合いを続けることはなく、金額について話し合いがまとまらない場合は、裁判所が審判をすることになります。審判というのは、提出された資料や諸般の事情を考慮して、裁判所が金額を決定する手続です。婚姻費用の支払いは、法的に婚姻関係が解消されるまでこの継続するので、支払義務者にとってはかなりの負担であり、ボディーブローのようにじわじわ効いてきます。
この婚姻費用の負担から解放されるためには離婚が成立しなければならないのですが、今回のケースのように自らが浮気をしたような場合には、簡単に離婚は認められません。勿論、浮気は「不貞行為」ですから、民法が列挙する離婚原因に該当するので(民法第760条第1項第1号)、不貞をされた側、今回のケースでいえば、妻側から離婚請求することは簡単です。
しかし、不貞した本人が離婚請求するというのは、講学上、「有責配偶者からの離婚請求」と呼ばれており、現実問題として非常に離婚は困難です。有責配偶者から離婚訴訟が提起されると、裁判所は有責配偶者からの離婚請求が、信義誠実の原則に照らして許されるものであるかどうかを判断することになりますが、その判断にあたっては、有責配偶者の責任の態様・程度、相手方配偶者の婚姻継続についての意思及び請求者に対する感情、離婚を認めた場合における相手方配偶者の精神的・経済的状態、夫婦間の子、とくに未成熟の子の監護・教育・復氏の状況、別居後に形成された生活関係等が考慮され、時の経過がこれらの諸事情に与える影響も考慮されます。
そして、
①夫婦の別居が両当事者の年齢・同居期間との対比において相当長期間に及んでいるか否か
②その間に未成熟の子が存在するか否か
③相手方配偶者が離婚により精神的・経済的に極めて苛酷な状況に置かれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような事情が無いときは、有責配偶者からの離婚請求を認容することができる
とされています。
上記からもわかるように、有責配偶者からの離婚請求はきわめて難しく、今回のケースでは、夫が離婚したいといっても、妻が断固として離婚を拒絶した場合、裁判離婚が認められる可能性は極めて低いといえます。
なお、妻は、夫の不貞行為の相手方に対して、夫とともに不貞行為の相手方に対しても共同不法行為に基づき損害賠償請求(慰謝料請求)することが可能です。ただ、裁判実務の現状では、高額な慰謝料は認められていません。
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